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キング・クリムゾン 50th
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2021ジャパン・ツアー初日公演レビュー / 歓喜の音楽体験参加にまだ間に合うのだ!

2014年の復活以来、20152018年に続く現行メンバーによる3度目のツアー。2018年のツアーまでは参加していた故ビル・リーフリンの不在は寂しいが、途中参加のジェレミー・トレイシーもドラムにキーボードに2018年以上の存在感を示し、キング・クリムゾン史上最長となった不動のラインナップは鉄壁のパフォーマンスを披露した。

 最後のジャパン・ツアーと言われている2021ジャパン・ツアー初日のセットリストは20152018年を体験して者にとっては言ってみれば凡庸。歴代代表曲を並べた新味のないセット、でも、クリムゾン・ベスト的な選択でファンには嬉しい内容。これに鉄壁の演奏とくれば、最後のオリジナル・プログレ・バンドのノスタルジックなさよならツアー、これでやめちゃうのはもったいないと誰もが後ろ髪引かれるパフォーマンス。この日のセットリストを後から確認して観てきたようなコメント書くならば「大変よくできた最後の年金回収ツアー、さらばキング・クリムゾン!」ってことで済まされるのだろうが、それを観てしまった今は、そんな軽口は叩けない。

 ライヴはネットの書き込みより奇なり! 年寄りの冷や水どころか決死の北極海寒中水泳レベルのとんでもないパフォーマンスだったのであった。

 初日のパフォーマンスを観て頭に浮かんだのは、ジェット機は高度1万メートルとかを飛ぶから安全なのであって、仮に航路に障害物が何もないと仮定しても地上1メートルを航行することが人間にできるとは考えづらい。だって地面はフラットではないから。歩いていてもほとんど感じなくても様々な起伏があるし逆に窪みもある。その起伏への激突を回避しながら地上1メートルを音速で飛ぶなどということは不可能としか思えない。だが、2021年のキング・クリムゾンは敢えてそこにチャレンジしているといったイメージ。よって、ほんの小さなミスも全崩壊に繋がる緊張感がパフォーマンス全体を支配する。実際、些細なオペレーション・ミスは其処彼処で発生していた。でも崩れない、次の瞬間にはなに事もなかったかのようなシュアーな演奏に復帰しているのだ。複雑極まるリズムをキープする中、小さなミスでもリズムを見失いブラックアウトに繋がる綱渡り的な演奏を7人のメンバーは同一ラインナップで7度のツアーを重ねてきた経験で紡ぎあげるそんな印象だ。

 毎年、新たな演奏曲が追加され、それがファンの話題となり、また憶測を生んできた2019年のツアーまでとは異なり、今年のツアーはコロナ禍を超えツアーを実施したこと以外、新味はないように言われていたが、今回東京初日公演を観て2021年の最新ライヴ・アルバム『音楽は我らが友 ライヴ・イン・ワシントン&オルバニー 2021』の英文ブックレットに引用された2021822日のロバート・フリップの日記の最後に記された「これは素晴らしいバンドだと思う。そして何やら深みを増している」という一文が頭に浮かんできた。今回のツアーにはフリップの言葉通り前2回のジャパン・ツアーにはなかった演奏の深度があるように思う。

 初日公演第一部は恒例のドラム祭りからスタート。冒頭はドラムの分離が今一つでPAの出音がベタッとした印象だったが、バンド演奏スタートとなる「冷たい街の情景」の後半部でキレがありヴィヴィッドな分離のサウンドに修正され上々の滑り出し。圧巻の音圧、ドラム陣が考え出した新たなリズム・パターンが弦・管楽器隊の演奏と絡み合い聴き慣れた楽曲をブラッシュアップ。続く「宮殿」は原曲でも演奏が一旦終わった後に始まるフルート音のようなメロトロン・サウンドから導かれるコーダ部分が拡張されたヴァージョン。原曲よりも不安定で不吉なメロトロン・メロディを弾くのはフリップ。リーフリン不在の今回のツアーはキーボードを弾く場面も前回以上に多かった。不吉なコーダ・パートはまるでクリムゾン王の宮殿崩壊を想起させるかのような不穏なイメージに満ちていた。

 個人的には2018年のツアーでは軽く流したかのようなアレンジが食い足りなかった「レッド」は今年のヴァージョンではだいぶ重量感が戻った感じがあったが、続く「再び赤い悪夢」で「冷たい街の情景」から気になっていたジャッコの声に張りがなく、伸びも今ひとつなのが顕著になった印象。多少気がかりだがツアー初日で本調子でなかったというところなのだろう。公演を重ねるうちに調子が上向くことを祈りたい。

 トニー・レヴィンがエレクトリック・アップライト・ベース奏でる「トニーのカデンツァ」から始まり「ニューロティカ」、「インディシプリン」へと展開していく第一部終盤パートは圧巻の演奏が作り上げるリズムの冒険!初期楽曲ばかりでなくポリリズム時代の楽曲にも決着をつけたといっても過言ではないリズムの躍動に思わず息を飲む演奏であった。

 第一部ラストは「アイランズ」ジャッコの喉の不調、若干の演奏の乱れもあり、この日は不発といった印象だった。

 休憩を挟んでの第二部も第一部同様ドラム祭り「Drumsons」でスタート。ちなみにこの日のセットリストでは第一部のサブタイトルが「The Way to The World Peace & Amity」、第二部が「Take A Walk In The Park」となっていた。

 続くは「太陽と戦慄 1」。これまでのアレンジでは中間部に新規追加されたメル・コリンズが公演国の国歌等をサックスで吹くパートがカットされ、サムピアノから始まり、コーダに至るオリジナル・アレンジからヴァイオリン・パート、中間部のオリエンタル風になるパートを外したものに変化。全体の印象もより締まったイメージとなった。オリジナルに近いアレンジはやはり惹かれるものがあったし、ジェミー・ミューア在籍時のナンバーだったことをハッキリと意識させてくれるマステロットのパーカッション・ワークも聴きどころとなっていた。

 「エピタフ」を挟み後半のリズムの冒険は「ラディカル・アクション2」か「レヴェル・ファイヴ」のメドレー。前半のリズムの冒険と比較するとまだ微調整が必要かといった印象と弦・管楽器隊がリズムをいなしきれていない印象があり、まだ改善の余地がありそう。

 本編ラストは不動の「スターレス」だったが、ツアー初日ということもあったのだろうか? 元気なリズム陣に比べ弦・管楽器隊のハリが今ひとつに感じられた。アンコールはこれまでよりもすっきりした印象の「スキッツォイド・マン」。余分な部分を絞って強靭なリズム・マッスルを全面に打ち出した改訂版アレンジが頼もしかった。

 USツアー後2カ月今日のブランクを経てのジャパン・ツアー初日ということもあって、若干の乱れもあった演奏だったが、先にも述べたようにその緊張感溢れるパフォーマンスは2015年、2018年を凌ぐまさに集大成へ向かっての全力疾走といった印象を受けた。残る公演は5公演。2014年からスタートした現行クリムゾンが作り上げたものの更に上、正に「オーヴァー・ザ・トップ」を目指す最後の挑戦が続く、キング・クリムゾンの歴史に残る壮絶なパフォーマンスが実現する可能性も高い。単なるノスタルジーを超えた歓喜の音楽体験参加にまだ間に合うのだ!

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