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キング・クリムゾン 50th
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クリムゾン50周年記念企画「キング・クリムゾン50」

プロローグ

1969年1月13日、
ロンドンのフラム・パレス・カフェでロバート・フリップ、マイケル・ジャイルス、イアン・マクドナルド、グレッグ・レイクそしてピート・シンフィールドがジャイルス、ジャイルス&フリップを母体に発展した新バンドのリハーサルを開始しました。

新しいバンド名は”キング・クリムゾン”。
プログレッシヴ・ロックのみならず、ロックの歴史にその名を残す名バンドがこの日誕生したのです。

2019年、キング・クリムゾンは結成50周年を迎えました。
2014年に現行ラインナップで復活したクリムゾンは毎年ツアーを行い、今年も50周年記念ツアーを行うことが既に発表され、1995年以来となるロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール公演ほかヨーロッパ、北米公演の日程が既に決まっています。

キング・クリムゾン50周年を祝し彼らのレーベル、ディシプリン・グローバル・モービル(DGM)では様々なオーディオおよびヴィジュアル商品、記念グッズ、イベントを企画していますがその第一弾として2019年1月13日より「キング・クリムゾン50」と題したシリーズ・イベントがスタートします。

DGMの社長でプロデューサーでもあるデイヴィッド・シングルトン監修のもと1月13日より50週間、毎週1曲ずつキング・クリムゾンのレア・トラックをストリーミングで公開していくという企画です。膨大な音源アーカイヴを有するDGMの保管倉庫を総ざらいし、「キング・クリムゾン50」でしか聴けない貴重なトラックをピックアップ。曲の背景やエピソードを紹介するデヴィッド・シングルトン(時にはメンバーがシングルトンに代わり曲紹介することもあるとのこと)の音声コメントとともに公開していくという企画です。

WOWOWエンタテインメントでは日本のキング・クリムゾン・オフィシャル・ホームページで毎週シングルトンの音声コメント訳を添え、「キング・クリムゾン50」楽曲を紹介して行きます。
記念すべき第1回は1991年当時の所属レーベル、ヴァージンが企画したボックス・セット『フレーム・バイ・フレーム』のラジオ・プロモーション用に制作された「21世紀のスキッツォイド・マン」の幻のラジオ・エディット・ヴァージョン。

この曲を皮切りに毎週貴重な音源を公開して行きます。
是非毎週チェックしてください!

ハッピー・バースデイ! キング・クリムゾン

#39 : 「Walking On Air」

2019.10.07 公開


【コメント:日本語訳】

Walking On Air
1995年6月末ロサンゼルス、ウィルターン・シアター公演
「Sex Sleep Eat Drink Dream」EPより

以前このシリーズでもお話ししたとおり、キング・クリムゾンのアルバムの中で、シングル・カットが最も多いは『THRAK』です。

その中で、“Walking On Air”は2枚のシングルでリリースされています。

まずは、同名シングルがスタジオ・エディット。
もう一つは当ライヴ・ヴァージョン。「Sex Sleep Eat Drink Dream」EPのオープニング・ナンバーです。

ライヴ・マルチトラックからのミックスはエイドリアン・ブリューが、ナッシュヴィルの自宅スタジオで行いました。しかしその後、ありがたくないことに、我々のアーカイヴから2本のテープが欠けていることがわかり、1本がこれ。もう1本は「The ConstruKction of Light」のマスターです。

どちらも以前はエイドリアンのスタジオに存在していましたが、彼は持っていなくて、我々も明らかに持っていません。おそらく、どこか途中の、バミューダ・トライアングル的なところに吸い込まれてしまったのでしょう。

実際、どちらのレコーディングもヴァージンEMIのために行われました。そう考えると、バミューダ・トライアングルは、ヴァージョンのテープ・アーカイヴの未知の一角、なのかもしれません。

ユニバーサルのテープ・アーカイヴが2008年に燃えてしまったのをご存じの方もいるでしょう。その時失われた物の歴史的価値を思うとゾッとしますが、我々のマスターがそこになかったことを願うしかありません。

というわけで、マルチ・トラックはありませんが、ミックス後のヴァージョンは存在します。聴いてみましょう。

「Sex Sleep Eat Drink Dream」EPより
1995年のライヴ・パフォーマンスで
Walking On Air


#38 : 「Larks’ Tongues in Aspic, Part Two」

2019.09.30 公開


【コメント:日本語訳】

Larks’ Tongues in Aspic, Part Two
2012年『Larks’〜』ボックスセットより

長きに及ぶキング・クリムゾンのライヴ・レパートリーの中で、特にこのバンドを代表する1曲と言えば、まず、“Larks’ Tongues in Aspic, Part Two”でしょう。

“21st Century Schizoid Man”は、意外にも、各ラインナップを通じて散発的にしか演奏されず。対照的に、“Larks’〜”は、1973年にリリースされて以来、すべてのラインナップで定期的に演奏され続けています。

なぜ人気なのでしょうか。それは、この曲が“官能的”だから?

ロバート・フリップもこんなことを言っていました。

「この曲は、セックスというプロセスの輪郭をなぞっている」

実際、1974年には、フランスのソフト・ポルノ映画「エマニエル夫人」のセックス・シーンでこの曲が無断使用されています。
まだDVDやビデオすらない時代でしたから、ロバートはマネージメントから命じられてパリの映画館に向かい、カセットにサントラを録音しました。意見を言うために。そこから長期に渡る法廷闘争が始まりますが、最終的に、ロバートは作者として正しく認定されたのです。

この曲にはたくさんのヴァージョンがあります。今回のこのシリーズにどれを入れるべきか、白熱した議論が展開しました。長年に渡り、様々な形、様々なテンポで演奏されてきましたから。

つい先日も、1996年のメキシコ公演を聴いていたのですが、もしラヴ・メイクに例えるなら、それはそれは速く激しいものでした。

でも結局我々が選んだのは実に興味深い未完成品の抜粋です。1973年にロンドンのスタジオで、まさにレコーディング中のもの。エネルギッシュで、何より、ジョン・ウェットンのワンダフルなベース・プレイを聴けるまたとないチャンスです。

さっそく聴いてみましょう。
2012年の『Larks’ Tongues in Aspic』ボックスセットより
Larks’ Tongues in Aspic, Part Two


#37 : 「The complete ConstruKction of Light」

2019.09.23 公開


【コメント:日本語訳】

The complete ConstruKction of Light

以前他の回でも『The ConstruKction of Light』の再現プロセスについて語りました。パット・マステロットが新たにドラム・パートを録り、ビル・リーフリンのプロダクション・パートナー、ドン・ガンがミキシングをした、という話しです。

もともとこのアルバムは、私が1989年にロバート・フリップと知り合って以来、唯一参加していない新作です。

2000年にアルバムがリリースされた頃、私はシアトルでダウンロード問題に立ち向かい、正気を取り戻そうとしていました。相手は初期のナプスターやmp3.com。それが、ある意味、DGMLIVEというウェブサイトに繋がったとも言えます

そういうわけで、私自身、『The ConstruKction of Light』というアルバムの原案にあまり馴染みがありませんでした。それはタイトル曲のスタジオ・ヴァージョンについても言えます。
この曲のインスト・パートは、今なお、ライヴ・レパートリーの一部となっていますね。トニー・レヴィンいわく、ここでのスティック・ベース・パートは史上最強だそうです。

新しいスタジオ・ミックスを初めて聴いた時、最後の方で「the man might improvise the construKction of light」という、聞き覚えのない歌詞が耳に入りました。さっそくオリジナル・アルバムをチェックしたのですが、そこにもありません。

2000年に編集作業を行なったロバートとアレックス・マンディが、ヴォーカル・ラインの最後の2行を削除したとのことでした。その当時の決定を重んじて、今回のリイシューでも、『Heaven and Earth』ボックスセットでも、この時のエディットをそのまま使用しています。

しかし、この2行が入っているヴァージョンは、KC50シリーズ向けの、とてもおもしろいアウトテイクです。

なので聴いてみましょう。
完全版スタジオ・レコーディングで
The ConstruKction of Light


#36 : 「Catfood Unreleased alternative mix」

2019.09.16 公開


【コメント:日本語訳】

Catfood
Unreleased alternative mix

“Catfood”は1970年3月にシングル・リリースされました。

その際、キング・クリムゾンとしては最初で最後、BBCのトップ・オブ・ザ・ポップスに出演したのですが…

この変則ビートは、いわゆる一般オーディエンスには、まるでビートが足りないように映ったはずです。ロバートは今でもその時の不思議な光景を語ります。合わせて踊ろうとするダンサーたち。カメラ用にへたくそなアテ振りをするバンド・メンバーたち!

この時の映像はBBCが消去し、失われたと長年思われていました。実際、彼らは他のどの会社よりも貴重な映像を消してきたと思われます。でも、ありがたいことに、ドイツのヒッツ・ア・ゴーゴーという会社がライセンス契約を結んでいました。おかげで最近になってふたたび世に現れたのです。

“Catfood”の付加価値という点では、その数ヶ月前、グレッグ・レイク、マイケル・ジャイルス、イアン・マクドナルドが一斉に脱退を表明しました。が、このシングルをリリースすることで、ロバート・フリップとピーター・シンフィールドから続投表明がされたと言えます。

もちろん、シングルにもアルバム『In The Wake of Poseidon』にも、グレッグとマイケルは参加していますが。

今回のこのミックスには、オリジナル・ヴァージョンとは違う要素が含まれている一方で、最後のエレクトリック・ギターラインが取り除かれています。しかし何より、キース・ティペットの、素晴らしくラウドで威厳に満ちたピアノ・パートにスポットライトが当たるのはとても喜ばしいことです。

では聴いてみましょう。
未発表のオルタナティヴ・ミックスで
Catfood


#35 : 「Dangerous Curves Reinvented version」

2019.09.09 公開


【コメント:日本語訳】

2001年 Dangerous Curves
Reinvented version

アーカイブからレア曲をたくさん見つけてくるとしたら、“未発表音源”以上にレアな物はないですよね。

とは言え、当初の予定は違っていました。当初は、EP『Level 5』に入っているままの、“Dangerous Curves”ライヴ・ヴァージョンを使うつもりでした。これは、2001年に行われたUS秋ツアーのマーチャンダイズとしてリリースされたものです。

どことなくユーモアがあって、どこか危うい初期ヴァージョンです。なぜなら、この時点では、まだアイディアが完全には固まっていなかったから。

キング・クリムゾンは、スタジオでレコーディングする前に、ライヴで楽曲を披露するのが好きです。“Dangerous Curves”も、翌年、アルバム『The Power To Believe』用に収録されるまでに、かなり変化を遂げました。

特にエンディングはよりドラマチックになっています。
なので、あとから、初期ヴァージョンにその部分を加えるのはよいアイディアだと思いました。

曲はとても静かに始まりますので、私も囁きます。

聴いてください。

刷新されたヴァージョンで
2001年『Level 5』EPより
Dangerous Curves


#34 : 「Book Of Saturday」

2019.09.02 公開


【コメント:日本語訳】

Book of Saturday
Larks’ Tongue In Aspic 40th Anniversary Edition から
オルタナティヴ・テイク

当シリーズでは何度か、有名曲の初期ヴァージョンを選んできました。
それらは、オーヴァーダビングで飾られていない分、より本質的な魅力を放っています。

この“Book of Saturday”もまさにそうです。

CD『Keep That One Nick』を聴いた方はご存じでしょうが、『Larks’〜』のレコーディング・セッションは興味深いアウトテイクの宝庫です。

もちろん、メインテイクにもたくさんの秘密が隠されています。例えば、このコメンタリーの冒頭で流れた“Exiles”のピアノ・パートがそうですね。

実は今回、“Book Of Saturday”の、このオルタナティヴ・テイクではなく、アルバム・ヴァージョンのオルタナ・ミックスをもう少しで使うところでした。というのも、後者は、ジョン・ウェットンのアーカイヴ・テープの中から、ごく最近発見されたばかりなのです。

つい、あれもこれも選びたくなってしまいます。こうなると、KC100シリーズをやるしかないでしょうか!

このテイクはロバート・フリップのギターと、ジョン・ウェットンのヴォーカルのみで構成されています。1973年初旬にコマンド・スタジオで録られました。やはり、これこそ完璧なチョイス。この胸に迫る感は貴重です。

聴いてみましょう。
『Larks’ Tongue In Aspic』40th Anniversaryより
“Book of Saturday”の初期ヴァージョン


#33 : 「Form No.1」

2019.08.26 公開


【コメント:日本語訳】

Form No.1
The 21st Century Guide To King Crimsonより

というわけで、今回は趣をガラッと変えて。

“Form No.1”は楽曲であると同時に、未来への可能性を垣間見られる、一種の“じらし”でもあります。

事の発端は、エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、パット・マステロットが編み出したバッキング・トラックにあります。そこに、ロバート・フリップが高速バイオリン・ラインを加えました。弾いているのはバイオリンではなくギターですよ。念のため。

そしてプロダクションとストリングス・アレンジについては、例の問題児The Vicarがキング・クリムゾンの世界へと進出した珍しいケースです。

曲中、エイドリアンが「37 forms」と言っているのが聞こえますね。そこから、37のミニチュア曲を集めたアルバム、というコンセプトが生まれました。キング・クリムゾンの新旧メンバーが、様々なバッキング・トラックに乗せて即興を披露する、というものです。

みな、このアルバムを進めたいとは思っていますが、今は、ツアー・バンドにエネルギーを費やすことが最優先で、なかなか実現しそうにありません。

そう考えると、むしろ、アルバムがもっともっと先延ばしになって欲しいです。

とりあえず今は、ひとつの断片を聞いてみましょう。

2005年の
「The 21st Century Guide to King Crimson Volume Two」より
Form No.1


#32 : 「Three Of A Perfect Pair」

2019.08.19 公開


【コメント:日本語訳】

Three Of A Perfect Pair
アカペラのオープニング

“Three Of A Perfect Pair”は、1980年代にリリースされた3番目のアルバムのタイトル曲で、ロバート・フリップ、エイドリアン・ブリュー、ビル・ブラッフォード、トニー・レヴィンの4人によってレコーディングされました。

今回のこのレア物シリーズに何を入れるか考えていた時、“Three Of A Perfect Pair”のアカペラ・ヴァージョンは最初に提案されたものの一つでした。

初めて披露されたのは2016年の『On (and Off) the Road』ボックスセットの時で、この時のアカペラ・ヴァージョンは、2回のヴァースの後、多くのリード・ラインやリード・ヴォーカルが削ぎ落とされた形へと続きました。

このヴァージョンが今回聴けないことに不満を覚えるリスナーもいるかもしれませんが、ベテラン・リスナーには魅力的でも、初めて聴く人にとってはあまりピンとこないヴァージョンでもあるのです。

だとしたら、アカペラ・ヴァースの後何をすればいいか考えたのですが、一番惹かれたのは、最も手を抜いた形でした。つまり、2回のヴァースの後ストップする。もしくは、ヴァースを現存するミックスと繋げる、です。しかしこれは、ヴォーカルのバランスが違いすぎて無理でした。

というわけで、結局、答えはひとつしかありません。
新しい何かを作る、です。

あまりに新しすぎて、今まさにペンキ塗りたての状態です!

でもおかげで、このKC50シリーズに加えることができました。私としては、“Three Of A Perfect Pair”はこの時代のお気に入りの1曲なのでとても嬉しいです。

では聴いてください。

初披露のヴァージョンで、アカペラ・イントロからの
“Three Of A Perfect Pair”


#31 : 「Dr Diamond」

2019.08.12 公開


【コメント:日本語訳】

Dr Diamond
1974年3月30日、ドイツ・マインツ公演

“Dr Diamond”は、ライヴ演奏されたものの、一度もスタジオ・レコーディングされていないレア・トラックです。

正直、この曲を当シリーズに入れようと考えた時、一番良いパフォーマンスを見つけるのは困難だと思いました。でも、このマインツ公演に関するシド・スミスのライナーノーツをDGM LIVEで見つけてすぐ解決しました。そこには

「“Dr Diamond”のベスト・パフォーマンスを聴きたければ、これだ」
と書いてあったのです。

しかも、ありがたいことに、このコメンタリーで話せる裏話まで存在します。

もともとの収録は、ツアーのサウンド・エンジニアがオープン・リールのステレオ・テープ・マシンを使用して、会場のPAとまったく同じ音で録っていました。ただ、一本のリールでは30分程度の録音しかできません。そのため彼はテープ時間を節約するため、1曲終わるごとに一時停止ボタンを押していました。

ただ、彼が熱心すぎたのか、忘れっぽかったのかわかりませんが、オーディエンスの音が入ってないだけでなく、残念ながら、何曲かの頭のコードやエンディングのコードまで抜けていました。

そんな素材を編集して楽しめるようにするために、別の公演から失われた部分とオーディエンスを持ってきました。たしか、出どころは、同じ年後半のピッツバーグ公演です。この公演では“Dr Diamond”を含む多くの楽曲がかぶっていたからです。

この時はここまででした。

のちに、ジョン・ウェットンがコレクターズ・クラブ・シリーズのリリース時に書いたライナーノーツを読みました。彼は、コンサートに多くのアメリカ人がいて、このライヴ録音でもよく聞こえるとコメントしています。確かに、すぐ近くの米軍基地から大挙して押し寄せてきました。ジョンの言うとおりですが、私としては、なぜ、レコーディングに、あんなにたくさんアメリカ人の声が入っているのか、いまだに解せません。

でも大事なのは音楽です。
聴いてみましょう。

1974年3月30日のマインツ公演より
インプロヴィゼーションに続いて、Dr Diamond


#30 : 「Eptiaph_(Greg Lake Vox)」

2019.08.05 公開


【コメント:日本語訳】

Epitaph
グレッグ・レイクのアカペラ・ヴォーカル・ヴァージョン

さすがにみなさんご存じと思いますが、今年は“Epitaph”をはじめ、『In The Court Of The Crimson King』に収録されている楽曲の50周年です。
このKC50はそのためのシリーズであり、今週は30回目まで来ました。残すところ20回!

50周年ということは、当然、『〜Court』のボックスセットを予定しています。その準備段階として、1969年にウェセックス・スタジオで行われたオリジナル・レコーディングをすべて聴き直しました。

まぎれもない宝物です。

先日もロバートと朝食をとりながら、最初の完成しなかったアルバムについて話しをしました。ムーディー・ブルースのプロデューサー、トニー・クラークを起用した時のことです。

ロバートは、“I Talk To The Wind”のレコーディングがとても長く辛くて、トニーに、曲の間じゅうずっと、ギターをひたすらストラミングしているように言われたそうです。何度も、何度も。

その会話から数日後、私はまさにその時のマルチ・トラックを見つけました。確かに、曲の最初から最後までずっとギターをストラミングしていました。何度も、何度も。

同じ時に“Epitaph”の未完成版も出てきました。トニー・クラークがプロデュースしたものに違いないでしょう。

同じくトニーがプロデュースした、未完成“21st Century Schizoid Man”を加えれば「3つの完璧なペアー」となります。今BGMで流れているそれです。

さて、今回のKC50シリーズではどの曲を使いましょうか。

ここ一年ほどで、“Epitaph”のアカペラ・ヴァージョンがいくつもネット上に登場しました。もちろん、すべて違法です。

多くは、ソフトウェアを使って声を分離させていますが、ひとつだけ、あまりに質の高いものがありました。おそらく出どころはオリジナル・テープでしょう。本来我々のアーカイブから世に出てはいけない物です。
それが見つかって数週間はあちこちで怒っている人がいましたが、まあ、それも仕方のないことです。

でも私は思いました。それならいっそ、アカペラ・ヴァージョンの公式版を作ってしまえばいい、と。

グレッグ・レイクの存在感溢れるパワフル・ヴォイスと、ピート・シンフィールドの予見的な歌詞へのトリビュートです。

聴いてみましょう。
グレッグ・レイクのアカペラ・ヴォーカル・ヴァージョンで
Epitaph


#29 : 「Fans, Sloth, Nuns, Felons」

2019.07.29 公開


【コメント:日本語訳】

Fans, Sloth, Nuns, Felons
2015年『THRAK』ボックスより

フリーフォームなインプロヴィゼーションを求めるなら、『THRaKaTTaK』と、続く『ATTAKcATHRAK』を聴くにかぎります。

1995年にヨーロッパ、北米、日本をツアーした頃、キング・クリムゾンは頻繁に“Thrak”を演奏していました。これは3分から4分におよぶ、基本、インプロヴィゼーションです。

ツアーが終わり1996年に入ると、ロバート・フリップは、これらのインプロヴィゼーションを縫い合わせることを考えつきました。約1時間の“スラッキング”がどのような印象かを知るためです。

もともと私は、それぞれ6分から10分くらいの細かいピースを作っていました。でもロバートは完全に、連続する長いピースを想像していたのです。

そうやってピースを繋ぎ合わせたものが『THRaKaTTaK』です。

その後ツアーに出たバンドが我々の長いピースを聴くと、“Thrak”の演奏に変化が生じました。
そして年末には、『THRaKaTTaK』の続編『THRaKaTTaK 2』を作ろうと提案されたのです。

しかし私としては、そんな信じられないくらい複雑で緻密な作業、20年近く避けていたわけです!

が、2015年に『THRAK』ボックスを制作する際、もし続編をやるなら今でしょ、ということになり、ついにパンドラの箱を開け、1996年のパフォーマンスを聴き直しました。

その結果が『ATTAKcATHRAK』、別名『The Vicar’s Thrak』です。

当然20年間でテクノロジーは大きく進化し、おかげで、この時はステレオと共にサラウンド・サウンドも編集することがきました。

では、そのアルバムから2曲目を聴いてみましょう。
Fans, Sloth, Nuns, Felons


#28 : 「Matte Kudasai (Alt Intro)」

2019.07.22 公開


【コメント:日本語訳】

Matte Kudasai
ギター・イントロの異なるヴァージョン

“Matte Kudasai”は日本語で「please wait」と言っています。

1981年にシングルとして、また『DISCIPLINE』の収録曲としてリリースされました。

最近のCDリイシューや、当時のヴァイナルLPを購入した方はご存じだと思いますが、スタジオ・レコーディングには2ヴァージョンあります。

現在“オフィシャル”・ヴァージョンと呼ばれている方にはエイドリアン・ブリューのギター・ソロが含まれています。
一方、LPにはロバート・フリップのギター・ソロとギター・ラインが入っています。

後者は通常“オルタナティヴ”・ヴァージョンと呼ばれているので、今回のこの企画にはピッタリです!

しかし、話しはそこまでシンプルではありません。このヴァージョンはアルバムのボーナス・トラックとしてリリースされ、すでに知れ渡っているからです。

というわけで、今日ご紹介するのはまったく新しい第3のヴァージョンになります。

DGM LIVEにアップロードするため、アレックス・“ストーミー”・マンディは“Matte Kudasai”のマルチトラックを再訪し、新たなダブ・ヴァージョンを制作しました。
ここでは、元のアルペッジョ・ギター・ラインとロバート・フリップのサステナー・ギター・パートがフィーチャーされています。

これらはオフィシャル・ヴァージョンでは使用されていません。なぜなら、エイドリアン・ブリューがスライド・ギターで弾く“カモメの鳴き声”が素敵に使われているからです。

でも今回は、オルタナティヴな世界への扉を開くためにも、異なるイントロとフレーズを採用してみました。

それでは聴いてみましょう。
ギター・イントロの異なるヴァージョンで
Matte Kudasai


#27 : 「Level Five from MELTDOWN LIVE IN MEXICO」

2019.07.15 公開


【コメント:日本語訳】

Level Five
from 『MELTDOWN LIVE IN MEXICO』

“Level Five”が最初に披露されたのは2001年。同時のダブル・デュオ、エイドリアン・ブリュー、ロバート・フリップ、トレイ・ガン、パット・マステロットによる演奏でした。

そして、ライヴ・レコーディングであるオリジナルは同じ年の後半に『LEVEL FIVE』というEPに収められました。

『THE POWER TO BELIEVE』に収められているスタジオ・ヴァージョンも、最後にうっすらと拍手が聞こえるために、ライヴ・レコーディングか?ときかれることがあります。
これはすべてスタジオ・テイクですが、“Level Five”と“Eyes Wide Open”を繋ぐセグエの部分では、ほんの少しだけライヴ・レコーディングを使っています。

“Level Five”は、現ラインナップが素晴らしい形で復活させ、新たな息吹を吹き込んだ楽曲の一つでもあります。それはこの、2017年のメキシコ公演を聴けば明らかです。

最近のセットリストでは、この曲の前に『RADICAL ACTION』の中から何かが置かれます。そして曲じたい、元々の“Larks’ Tongues in Aspic: Part V”と呼ばれるようになりました。

そもそも、当初“Level Five”というタイトルで発表されたのは、「また“Larks’ Tongue〜”の一部か」という先入観なしで聴いてもらいたいという意図からです。

しかし、本来はあの大きな作品の一部であることを正しく示すためにも、今は元の名前で呼ばれています。

それでは聴いてください。
『MELTDOWN LIVE IN MEXICO』より
Level Five


#26 : 「Bolero (With Tony Levin)」

2019.07.08 公開


【コメント:日本語訳】

Bolero

フルで言うと
Bolero – The Peacock’s Tale
ベースはトニー・レヴィン

“Bolero”は、1970年にリリースされたキング・クリムゾン3枚目のアルバム『LIZARD』の、B面すべてを占める“Lizard Suite”の一角。

そして現ラインナップにより復活を果たした、多くの楽曲の一つでもあります。最初のパフォーマンスは2018年でした。

彼らが初めてこの曲のリハーサルを行なったのは私の自宅ででした。2018年4月のことです。

しかし、本当の再出発はもっとずっと前に始まっていました。1991年に、『FRAME BY FRAME』ボックスセット用に、ロバート・フリップがトニー・レヴィンを招きベースを弾いてもらったのがきっかけです。

私はこの時トニーと初めて会ったのでよく覚えています。
バース近くにある、ピーター・ゲイブリエルのリアル・ワールド・スタジオにトニーを迎えに行き、ボックス・セットを作っていたクランボーンのトニー・アーノルドのスタジオに向かいました。

トニー・レヴィンは私の後ろのソファに座り、私がトラックの音を出すと、初めて聴いたにもかかわらず、すぐにザッとスコアを書き始めました。
その後、ロバートと方向性について話し合うのですが、トニーからの質問は「原曲と同じく、トップの音を若干フラットめにするか」でした。

2度目に音を出すと、まだソファーに座ったままのトニーは、最後まで一気に演奏しました。

3度目に音を出すと、ロバートとトニーはそれで満足だといい、そのままレコーディングは終了しました。

「これがワールド・クラスのミュージシャンと働くと言うことか」と私は気づかされたのです。

話しには続きがあります。

2018年、メンバー全員に“Bolero”のオリジナル曲を送り、アレンジメントを考えてくれるよう頼みました。しかしリハーサルの時、トニーがベース・パートに共感できずにいたのです。そこで私は、こちらのヴァージョンを送りました。トニーはやりやすそうにしていましたが、自分が弾いたものだとまったく覚えていなかったのです!

先日も、このコメンタリーで使える思い出話しはないかとトニーにきいてみたのですが、彼は何一つセッションのことを覚えていませんでした。

おそらく、メル・コリンズとトニー・レヴィンの二人が忘れてしまったセッションは山ほどあると思います。でもそれらは、普通のミュージシャンが生涯かけてもできないようなものばかりなのです。

そんなセッションの一つをお聴きください。
“Bolero” with Tony Levin on bass


#25 : 「Islands (Jakko Jakszyk Vocal) 」

2019.07.01 公開


【コメント:日本語訳】

Islands

オリジナル・スタジオ・ヴァージョンに
ジャッコ・ジャクスジクの新しいヴォーカルを加えました。

“Islands”という曲も、『ISLANDS』というアルバムも、ジャッコがキング・クリムゾンの世界へ、魅惑の旅に出るきっかけとなりました。

彼が生まれて初めて観たクリムゾンが、『ISLANDS』をレコーディングしたボズ・バレル、メル・コリンズ、イアン・ウォレス、ロバート・フリップというラインナップだったのです。

1971年6月15日にワットフォードで行われたこのコンサートについて、当時まだ13歳だったジャッコは今でも語ります。

その記憶はあまりに鮮明で、当日メル・コリンズがはいていたズボンの色まで覚えています!

『SAILORS’ TALES』ボックス・セットの中で、メルがそのズボンをはいている写真を見つけた時はたいそう喜んでいました。

このコンサートを観たジャッコは、同じ1971年の12月、『ISLANDS』の発売日に自転車を飛ばして買いに行ったそうです。

それから35年後の2006年。
ジャッコはソロ・アルバム『THE BRUISED ROMANTIC GLEE CLUB』で“Islands”をカヴァーしました。そこにはイアン・ウォレスとメル・コリンズも参加しています。

しかし一年も経たないうちにイアンが他界。
葬儀ではメルとジャッコが“Islands”を演奏しました。
ジャッコの目の前にはロバート・フリップが座っていました。

おそらく、ジャッコはいつかこの曲をキング・クリムゾンと演じる運命にあったのです。ご存じの通り、2017年にセットリストに加わってからは頻繁に演奏しています。

ツアーの準備段階では、ジャッコを含むメンバーにこの曲のオリジナル・マルチトラック・レコーディングを送り、各パートを分析してもらいました。
そしてジャッコの場合、新しいヴォーカルを加えるのが適当だと思われました。

ボズ・バレルの大ファンであるジャッコが、彼を越えるとか直すとか、考えるはずがありません。
これは一つの興味深い“別ヴァージョン”で、当初は、他に使うアテもありませんでした。

しかし結果的に『SAILORS’ TALES』のボックス・セットに収録され、別テイクのシリーズにはピッタリです。

それでは聴いてください。

ジャッコ・ジャクスジクのヴォーカルが加わった、
“Islands”のオリジナル・スタジオ・レコーディング


#24 : 「Asbury Park」

2019.06.24 公開


【コメント:日本語訳】

The Complete Asbury Park

“Asbury Park”のインプロヴィゼーションは、1974年6月28日に、ニュージャージー州アズベリー・パークで演奏/レコーディングされました。

そして一年後の1975年にリリースされたライヴ・アルバム『USA』に収録されています。

今回の、このシリーズのコメンタリーをフォローされている方、特に、もう一つのインプロヴィゼーション“The Law of Maximum Distress”を聞かれた方はご存じだと思いますが、ライヴ・レコーディングには、途中テープが足りなくなるという危険が伴います。

そう、このインプロヴィゼーション中も、まさにそれが起きたのです!

曲が7分ほど経った頃、マルチトラックのテープが終わってしまいました。なのでライヴ・アルバムでもそれが反映され、ファンは、え?この先どうなるの?となりました。

ありがたいことに、この先どうなるかがわかるレコーディングが残っていました。

1973年の場合は、エンジニアが元のテープをはずし別のテープを設置している間に1分くらいの音源が失われていました。

しかし“Asbury Park”の時はおそらくもう少し予算があったのでしょう。2台のテープマシンが使われ、一台がそろそろ終わりそうになったらもう一台をスタートさせ、コンサートを完全収録することができました。

私がこれを聞いたのは、1992年に『The Great Deceiver』というライヴ・ボックス・セットを準備している時でした。が、最終的に“Asbury Park”はここには含まれませんでした。

初めて公にされたのは2005年にローナン・クリス・マーフィーがアズベリー・パーク公演を丸ごとミックスして、DGM LIVEのサイトにアップした時です。

このヴァージョンがユニークなのは、ほとんどが1975年のオリジナル・ヴァージョンとまったく同じで、テープが足りなくなった所から先は、私とロバート・フリップが1992年に手掛けたミックスと連結させました。

聴いてください。
Asbury Parkのインプロヴィゼーション完全版


#23 : 「Elektrik」

2019.06.17 公開


【コメント:日本語訳】

Peace
『In the Wake of Poseidon』より

この組曲はアルバムの中3箇所でジョイントの役割を果たし、一つの大きな楽曲を構成します。

このニュー・エディットは、今ライヴで披露されている形からインスパイアされました。ある意味、現在が過去までさかのぼり再形成したと言えます。

この曲をライヴ演奏するという考えは、2015年11月にバンクーバーで生まれました。ロバート・フリップがジャッコに、歌えるか?ときいたことからです。もちろん彼には歌えました。

その後、ロバートのギターの、新しい基本チューニングでは弾くのが困難だとわかり、ジャッコがギターも弾くことになりました。

ところが、ジャッコが覚えていたギター・パートは、実はテーマのインストゥルメンタル版であることが判明し、これは、ヴォーカルの下で鳴っているギター・パートとは異なるのです。

でもジャッコにはそんな細かいことで悩んでいる暇はありませんでした。なぜなら、バンクーバー公演の2日目には、曲はすでにセットリストに含まれていたのです。

しかも、1週間ほど後の東京オーチャード・ホール公演ではオープニング・ナンバーに選ばれ、第一声は、アカペラで、日本語で、というものでした。

キング・クリムゾンのシンガーってよほどの勇気が必要です!

このエディットは、キング・クリムゾン最初のシンガーが1970年に歌ったオリジナル・ヴァージョンを再訪しつつ、ライヴ・パフォーマンスの魂を反映しています。

聴いてください。
『In The Wake of Poseidon』より
Peace (suite)のニュー・エディット


#22 : 「Elektrik」

2019.06.10 公開


【コメント:日本語訳】

Elektrik
『The Power To Believe 40th Anniversary Edition 2019』より

誤解している人がいるといけないので。
『The Power To Believe』が40歳なのではありません!

あくまで『In The Court of the Crimson King』の40周年を祝うシリーズです。今年が50周年ということは、シリーズ完結まで10年かかったというわけですね。

『The Power To Believe』は2002年の作品なので、わりと新しい、つまり、リミックス作業も比較的楽なのでは?と思われがちです。

それがそうでもないんです。

『The Construkction of Light』同様、デジタル録音された今作は、テープに安全に保管された古い作品群よりもリミックスに手間取りました。

『The Power To Believe』が書き残されていたハード・ディスク上には、様々な音源が散らばっていました。それらは、2002年のレコーディング時に使われたプログラムで再生しなければほぼ無意味だったのです。

ありがたいことに、プロデューサーが使用したマシンの中にプログラムは残っていました。おかげで、我々にも使用可能なシンプルなファイル形態に合理化することができました。

しかし問題は、最終マスターに使われた素材の多くが、それらのファイルに入っていなかったことです。

そこで私とロバートでいくつかのパーツを作り、バンドのスタジオ・レコーディングと結合させました。

そういう背景もあって、新しいステレオ・ミックスを作る予定はありませんでしたが、新しい5.1サラウンドには成功しました。

もしまだサラウンド・サウンドに接したことがないなら、ぜひ聴くことをお薦めします。これは、そういった包み込むような臨場感にピッタリな作品だからです。

本来ステレオはやらないつもりだったと言いましたが、サラウンドを作った後、2曲だけ、“Elektrik”と“Dangerous Curves”は我々の判断で微調整しました。

リミックスでもリマスターでもなく、数カ所、オリジナル・ミックスに手を加えただけです。

それにしても、本当に素敵な曲ですね。

聴いてみてください。
『The Power To Believe 40th Anniversary Edition』より
Elektrik


#21 : 「Two Hands Remix」

2019.06.03 公開


【コメント:日本語訳】

Two Hands Remix

2016年に『On (and Off) The Road』ボックスセットを作った際、アレックス“ストーミー”マンディーと何曲かリミックスを手掛けました。

楽しかったです。
なぜなら、いつもなら前面に置かれるリード・ヴォーカルやメインのギターラインを二の次にすることで、名曲の別の側面が見られるからです。
言うなれば、バックラインをフロントラインに置く。
隠れた宝物を掘り起こす、ということでもあります。

80年代の名曲の中から“Frame By Frame”、“Sheltering Sky”、“Discipline”、“Heartbeat”、“Sleepless”などをリミックスしましたが、ではなぜこのKC50ではあえて“Two Hands”を選んだのでしょう?

それは、この曲のリミックスが他と違うからです。

他のリミックスは、すでに原曲を愛してくれている人々が楽しみやすくなっています。

もし「“Frame By Frame”のどれか一つのヴァージョンしか使っちゃいけない」と言われたら、私はオリジナル・ヴァージョンを選びます。

でも“Two Hands”に関しては迷います。
この新ヴァージョンにはなんとも絶妙な繊細さがあるからです。
オリジナルよりキング・クリムゾンっぽいという議論も起こりました。

『The Compact King Crimson』のような、メインストリーム向けのコンピレーションには含まれないでしょう。今回のアートワークはこのコンピから来ていますが…。

KC50シリーズは、カタログの中でも普段あまり日の目を見ない楽曲にスポットライトを当てるチャンスなので、この曲はとても良い例だと思います。

判断はおまかせします。

聴いてみましょう。
2016年『On (and Off) The Road』ボックスセットより
“Two Hands”リミックス


#20 : 「Fracture Live mix」

2019.05.27 公開


【コメント:日本語訳】

Fracture Live mix
『Starless〜』ボックスセットより

さて、どこから始めましょう。

これは、1973年11月23日にオランダ・アムステルダム、コンセルトヘボウで行われたコンサートの音源をスティーヴン・ウィルソンがミックスしたものです。

となれば、私とロバート・フリップが1997年に制作した『The Night Watch Live』という、このコンサートの公式ライヴ盤のリミックスとも言えます。

でも実際はそこまでシンプルじゃないのです。

確かにミックスじたいは違っていても、“ライヴ”ヴァージョンの“Fracture”は、『Starless and Bible Black』に収録されている、“スタジオ”ヴァージョンの“Fracture”とまったく同じだからです。

『Starless and Bible Black』はスタジオ・アルバムとして発表されていますが、そのほとんどはライヴ音源です。このアムステルダム・コンセルトヘボウ公演からも4曲が使われています。“Fracture”、“Starless and Bible Black”と“Trio”という2つの即興曲、そして“The Night Watch”のイントロです。

そうでなくてもライヴ・アルバムのミックスは難しいのに、この時はスタジオにテープを持ち込み、“Starless and Bible Black”のように編集をするか、“The Night Watch”のように新しいパートが加えられました。

我々は、どんなに限られた素材でも、なるべく当日の演奏に忠実なライヴ盤を制作しています。

当時、この公演から7曲がBBCによって放送されました。これらもボックスセットに収められていますので、我々がズルをしていないか、どうぞ比べてみてください。

では、1972年11月23日アムステルダム・コンセルトヘボウ公演より
“Fracture”をどうぞ。


#19 : 「The Light of Day」

2019.05.20 公開


【コメント:日本語訳】

ジャクスジク・フリップ・コリンズ
The Light of Day (Improv)

ジャクスジク・フリップ・コリンズが2011年にリリースした『A Scarcity of Miracles』は、キング・クリムゾンProjeKctの一環です。言うなれば、

King Crimson ProjeKct 7

そしてこれは、2年後の2013年から始まる現ラインナップへの踏石でもあります。

他のProjeKct同様、ジャクスジク・フリップ・コリンズもインプロヴィゼーションを基本としていました。
出発点は、ブロード・チョークのスタジオで行われた、ロバートとジャッコの即興演奏です。

一日が終わると、ロバートは録音した素材をジャッコに渡し、「どうにかしてみろ」と言いました。

それから数ヶ月、夜遅くになると、ジャッコから送り返された音源を聴いているロバートの姿が思い出されます。

それはまだ“歌”と呼べるものではなく、だからと言って生の即興でもなく、その中間に位置する音楽はとても美しく曖昧でした。
完成品になる前の、進行形の音楽です。

その“間”の楽曲を、アルバムのリイシューに加えることを検討していた時、アレックス・“ストーミー”・マンディーがこの“The Light Of Day”を発掘し、DGM LIVEのサイトにアップロードしました。まさにマジックが捕らえています。

聴いてみてください。
ジャクスジク・フリップ・コリンズで
The Light of Dayの初期ヴァージョン


#18 : 「Medley」

2019.05.13 公開


【コメント:日本語訳】

1991年のキング・クリムゾン・メドレー

『The Abbreviated King Crimson』の最後を飾る1曲です。

このアルバムのオープニング・ナンバーは“21st Century Schizoid Man”ラジオ・エディット。そう、この50周年企画の第1曲目です。

正直、このラジオ・エディットを手に入れるためマスターを聴くまで、このメドレーの存在はすっかり忘れていました。

これは、デジタル編集初期の産物です。『Frame By Frame』ボックスセットを制作するために、コンピューターにクリムゾンの主な楽曲をすべて読み込みました。つまり、それらは「さあ、遊んでくれ」と言っているようなものです。

もちろん楽しみましたよ。まさに“クリムゾン宮殿の混乱”です!

1分半でクリムゾンを把握できます。これ以上必要ありません。金魚ほどの集中力しかない人にも最適な入門編です。

1991年に作られたものですから、当然、それ以降の素晴らしい楽曲は含まれていません。『Thrak』、『ConstruKction of Light』、『Power To Believe』はどれも、その後カタログの重要な一部となりますね。

メドレーを延長させるべきか考えたこともあります。でも、こういう物は手をつけない方がいい。次また新しいのを作りましょう。

では聴いてください。
1991年『The Abbreviated King Crimson』より
Medley


#17 : 「Dinosaur」

2019.05.07 公開


【コメント:日本語訳】

Dinosaur
1995年のシングル

まずは、珍しいことから始めましょう。
「キング・クリムゾン・ポップ・クイズ」!

質問:シングル・リリースが一番多いアルバムは?
そしてその数は?

まあ、今回この曲が選ばれたことから予想つきますね。
答えは『THRAK』です。
そして驚くことに、このアルバムから4枚ものシングルがリリースされました。

アメリカ・ヴァージン・レコードの宣伝部トップ、マイケル・プレン氏が“Dinosaur”、“Sex Sleep Eat Drink Dream”、“Walking on Air”、“People”の4枚をラジオ・プロモーション用にシングル化しました。

当時は、キング・クリムゾンがジャネット・ジャクソンなみにシングル出してる、と茶化されたものです。

しかし、会社の偉い人の中にファンがいることに損はありません。
実際アメリカは『THRAK』にとって最大の市場で、マイケルの信念は正当化されました。

ラジオ・シングルではオーケストラ・セクションが取り除かれています。
その過程は、未来のレコーディング・エンジニアたちにとって興味深いかもしれません。

もともとオーケストラの部分は、ギター・ソロ直前まで続いていました。しかしミキシングの段階で、ロバート・フリップが最後のフレーズをミュートし、ギター・ソロの前サイレントになるようにしました。

最初に聞いた時は、あるはずのものがないことにショックというか違和感を覚えました。しかしロバートは言いました。

最初からなかったものだと思ってもう一度聞いてごらん。

確かにそう思って聴くと違う印象を受けました。
そして突然、完璧に正しく思えたのです。

他のアーティストの作品も同じでしょう。
誰も“その他の選択肢”を知らないまま聴くので、疑いもない。

“Dinosaur”のアルバム・ヴァージョンしか知らないみなさんへ。
これが“その他の選択肢”です。
1995年のシングル・ヴァージョンをどうぞ。


#16 : 「The Sheltering Sky」

2019.04.29 公開


【コメント:日本語訳】

The Sheltering Sky
『THE NOISE – Live at Frejus』
1982年8月27日公演より

のちにDVD『Neal And Jack And Me』と、ボックスセット『On (and Off) The Road』にも収録されました。

今さらなことを言いますが、キング・クリムゾンの称賛されたパフォーマンスが映像として残っているのはごく稀です。

理由には、一部にカメラの存在があり、どんなに良いカメラマンであっても、ミュージシャンと音楽と観客との関係に望ましくない要素を持ち込んでしまうからです。

ミュージシャンの中には、その日のパフォーマンスがのちに製品化されると知ると、無難な演奏の誘惑にかられ、“知っている”ことだけを演じ“知らない”ことは避けるでしょう。

でもそういう奔放な空想こそが、キング・クリムゾンのライヴ・パフォーマンスの原動力なのです。

ありがたいことに、ルールには必ず例外があります。

例えば、現ラインナップは毎晩ステージ上に固定カメラを設置しています。そうすればカメラマンに邪魔されることもありませんし、2017年7月のメキシコ公演のような素晴らしいパフォーマンスもきちんと素材として準備できます。

1982年のフレジュス公演でも、そんなマジックが起きました。

映像部隊と移動スタジオは、ヘッドライナー、ロキシー・ミュージックを収録するためそこにいました。幸運にも彼らはキング・クリムゾンも録っていたのです。80年代ラインナップがプロの手により記録された数少ないケースです。

そんな嬉しいプレゼントの中から、この曲が特に際立っています。

聴いてください。

1982年『THE NOISE – Live at Frejus』より
The Sheltering Sky


#15 : 「Travel Weary Capricorn/Mars」

2019.04.22 公開


【コメント:日本語訳】

“Travel Weary Capricorn”と“Mars”
『EPITAPH』より

以前、“Yoli Yoli”と1983年の失われたアルバムについて解説している時に思い出したのですが、第一期キング・クリムゾンによって1969年に書かれた楽曲の中で、『IN THE COURT OF CRIMSON KING』に収録されなかったものも当然存在します。

これらのスタジオ・ヴァージョンはありません。
が、このラインナップによる最後の公演地、1969年12月サンフランシスコ、フィルモア・ウェスト公演の質の良いライヴ音源は残っています。

テープは2本あり、1969年12月14日、12月15日とはっきり記されています。従って、『EPITAPH』のボックスセットを制作した際、そのまま使用しました。

しかし、アーカイヴ作業の常として、問題が起こりました。

その後ポスターや日記を調べたところ、どうやら最後のコンサートは12月15日ではなく14日らしいのです。

テープの日付は信用してはいけません!

場合によっては、どの音源がどのコンサートであっても構わないかもしれませんが、この場合はとても重要なのです。なぜなら、どちらかの“Mars”は、このラインナップが発した最後の音となるからです。

12月14日と記されたテープの最後では、グレッグ・レイクが「また明日!」と言っているので、明らかに最終公演ではありません。

となると、もともと12月15日と書かれていた方の“Mars”こそが最後の演奏ですね。
この時のグレッグ最後の言葉は「ありがとう、グッドナイト、またいずれ」でした。

ただ、本当の締めの言葉はイアン・マクドナルドだと思うのですが、シンプルに「グッバイ」です。

それでは聴いてください。
1969年、サンフランシスコのフィルモア・ウェスト
12月13日の公演から“Travel Weary Capricorn”、
12月14日の公演から“Mars”
エディット・ヴァージョン


#14 : 「FraKctured」

2019.04.15 公開


【コメント:日本語訳】

FraKctured

『The ReconstruKction of Light』より

みなさんの中で、我々のハイレゾ/サラウンド・リイシューをフォローしてくださっている方々はご存じだと思いますが、次のリリースは『The ConstruKction of Light』になる予定です。

ところが、そこにはものすごく些細な問題があって……

『The ContruKction of Light』のマルチトラック・テープ完全版はもうこの世に存在しないのです。

もともとアルバムは1999年に、ナッシュヴィルにあるエイドリアン・ブリューのスタジオで録音されました。その時使われたのは、初期のデジタル技術A-DATだったのですが、このテープは我々の手元にあります。

このデータはのちに、コンピューターの初期編集システムに移行されたのですが、この時点でようやくドラム・パートが最終決定されました。

しかし2006年にエイドリアンのサウンド・エンジニアが急死したことで、コンピューターのデータも永久に失われてしまったのです。

というわけで、我々の元にアルバムはありますがドラムが入っていません。でもそんなこと、大した問題じゃありません!

やる気に満ちあふれたパット・マステロットが、これを、アルバムを“リ・イマジン”する良いチャンスだとポジティヴにとらえたのです。そして『The ConstruKction of Light』のすべてにドラム・パートを加えるという任務を遂行しました。しかも、オリジナル・ヴァージョンの電子ドラムを真似するのではなく、彼なりに新しいパートをアコースティック・ドラムで叩きました。

実は日本に滞在中、パットはネットオークションで、リンゴ・スターのコレクションの中からとてもレアなタムを見つけて落札していました。それがこのレコーディングで、キング・クリムゾン・デビューを果たしています。

聴いてみてください。
『The ReconstruKction of Light』より
“FraKctured”


#13 : 「Yoli Yoli」

2019.04.08 公開


【コメント:日本語訳】

“Yoli Yoli”
『On (and Off) The Road』ボックスセットに収録。

我々のレア物コレクションの中でも特にエキサイティングなのは、丸ごと“失われた”アルバムです。

みなさんご存じの通り、1981年には『Discipline』、1982年には『Beat』、1984年には『Three Of a Perfect Pair』がリリースされました。

では、1983年にいったい何が。

実際、『Three of a Perfect Pair』は1983年後半にレコーディングされました。が、その年のはじめに頓挫したレコーディング・セッションがあったのです。
1月17日から30日までの間、シャンペーン・アバーナで収録された素材は、アルバムでまったく使われませんでした。

その中の1曲“San Francisco”は、今、BGMで流れています。

その後、コレクターズ・クラブ#21として発表されたり、『On (and Off) The Road』ボックスセットの中のCD『Fragmented』に収録されました。

アルバムが丸ごと1枚分失われるなんて。

これでは『Three Of A Perfect Pair』というより、
Four Of An Imperfect Quartetです!

当時、エイドリアンがバッキング・トラックにヴォーカルを加えるべきだと私から提案したのですが、この“Yoli Yoli”に関しては、マーカス・スタジオですでに歌入れが行われていたので必要ありませんでした。

それでは聴いてください。
『On (and Off) The Road』ボックスセットより
“Yoli Yoli”


#12 : 「Starless/Red (Edit)」

2019.04.01 公開


【コメント:日本語訳】

Starless and Red

さあ、楽しいけれど、議論を呼びそうな時間の始まりです。

まずは基礎知識から。

今のストリーミング/ダウンロード時代に育った若者たちにはわからないかもしれませんが、過去の異なる音楽媒体には時間的制約がありました。

中にはとても短い物もあります。
例えば45回転のシングル盤は、4分以上の音楽を収録するつもりで作られていませんでした。従って“In The Court of the Crimson King”のような長い曲は分割され、アナログ盤シングルの両面に収められました。
ただ、アナログ盤には何とか音を詰め込むこともできて、ブルース・スプリングスティーンは片面に10分も入れてしまったことがあります。

しかしCDには超えられない限界があります。基本ルールでは、74分以上入れないことになっています。実際は80分弱くらいまで収録可能ですが、それ以上はもう、0と1の入る余地はありません。

ここで話しは1991年、クランボーンのトニー・アーノルドのスタジオに戻ります。
ここで私はロバート・フリップと共に『FRAME BY FRAME』ボックスセットの制作を行いましたが、“Starless”と“Red”が一枚のCDに収まりきれないという話しになったのです。

まだまだうぶで、クリムゾンの歴史にも精通していなかった私は、「“Starless”を2分割すればいい」と提案しました。歌の部分と後半のインスト部分です。

まさかこれが音楽的異端だとは、つゆ知らず。

しかし中にはこれを興味深いサプライズだととらえる人々もいました。そしてふたたび同じことを2004年の『21st CENTURY GUIDE TO KING CRIMSON』でも行ったのです。

そして何より、今回このKC50シリーズの中で、キング・クリムゾンの珠玉の名曲2曲を1曲分のお値段で聴けるなんて、素晴らしいじゃないですか!

それではお聴きください。
Starless and Red (edit)


#11 : 「Requiem (Extended)」

2019.03.25 公開


【コメント:日本語訳】

“Requiem” extended version

この曲はもちろんのこと、キング・クリムゾン9枚目のアルバム『BEAT』に収められています。
トリビア的に言うと、同じラインナップで1枚以上のアルバムを作った初めてのラインナップとなります。

また、この“Requiem”で初めて1983年のグラミー賞にノミネートされました。

曲の基本は、1979年のFrippertronics Tourでレコーディングされたフリッパートロニクスにあって、このextended versionでは、冒頭に5分半が付け加えられました。

音楽業界の権利事情について興味がある方。2002年に、この曲のイントロがDJサシャの“Cloud Cuckoo”という曲中でサンプリングされました。
このフリッパートロニクスはもともとロバート・フリップが自主的に録音した物であり、所有権はロバート・フリップ/キング・クリムゾンにあります。それをコントロールしていたのが当時クリムゾン・カタログのリリース元だったヴァージン・レコードです。

あとはみなさんで議論してください。言えることは、キング・クリムゾンでは先例的に、お金をもらって沈黙を演じたということです。

また、今バックグラウンドで流れているように、フリッパートロニクスを半分の速度で再生することも先例的でした。

では聴いてください。
『BEAT』40周年記念エディションより、
“Requiem” extended version


#10 : 「Prince Rupert Awakes featuring Keith Tippett」

2019.03.18 公開


【コメント:日本語訳】

Prince Rupert Awakes featuring Keith Tippett

なのに、今背後で聞こえているのは“Prince Rupert Awakes”ではないですよね?

こちらはちょっとした騒ぎです。“エリーゼのために”やら“God Save The Queen”やらが聞こえてきます。
これは、キースが、同じく『リザード』に収録されている“Big Top”に合わせて詰め込んだピアノ・パートなのです。

なかなかこの上でお喋りするのは難しい。演奏するのも、ましてや他の音楽にフィットさせるのも大変そうです。

キース・ティペットの特徴的なピアノ演奏は、『ポセイドンのめざめ』、『リザード』、『アイランズ』といった、1970年から71年にかけてのアルバムで聴くことができます。

ロバート・フリップは彼を、セッション・プレイヤーではなく、フル・メンバーにしようと誘いました。しかしキースは、自分の未来は別の所にある、と断りました。

キング・クリムゾンの仕事と並行して、自らキース・ティペット・グループを率い、一方ではセンティピードという大規模ジャズ・バンドでもレコーディング活動を行なっていました。このセンティピードのアルバム『SEPTOBER ENERGY』は、ロバート・フリップが1971年にプロデュースしたものです。

さあ、そろそろこの騒ぎから逃れて聴きましょう。
“Prince Rupert Awakes” featuring Keith Tippet


#09 : 「Eyes Wide Open Acoustic Version」

2019.03.11 公開


【コメント:日本語訳】

“Eyes Wide Open”アコースティック・ヴァージョン

これは2003年2月にリリースされるフル・アルバム『THE POWER TO BELIEVE』の4ヶ月前、2002年10月にリリースされたEP『Happy with What You Have To Be Happy With』に収録されています。

以前にも同じパターンで、『THRAK』というアルバムの5ヶ月前、1994年11月にEP『Vroom』がリリースされました。

どちらのEPにも、その後フル・アルバムに収録される楽曲の初期ヴァージョンと、『Happy with What You Have To Be Happy With』の“Potato Pie”や『Vroom』の“Cage”といったユニークな楽曲も合わせて収められています。

そしてどちらも、メインのアルバムに比べリラックス感が漂っているのが特徴的です。おそらくそれは、より小さなスタジオで、時間をかけずにレコーディングされたことの反映です。

それじたい少しも悪いことではなく、違った魅力があります。

私の役割は、ディシプリン内の様々な素材の中から、きちんとした作品を作るための要素を見つけてくることです。

編集作業中、ロバートと私は、“Eyes Wide Open”の冒頭にサウンドスケープを加えました。私の記憶が正しければ、それは(コーンウォールの)ニューリンで収録されたものです。

それでは聴いてください。
『Happy with What You Have To Be Happy With』より、
“Eyes Wide Open”アコースティック・ヴァージョン


#08 : 「Space Groove II」

2019.03.04 公開


【コメント:日本語訳】

Space Groove by ProjeKct Two

1997年、キング・クリムゾンのダブル・トリオはサブグループ化(=FraKctal)し、ProjeKct名義で活動していました。

言うなれば、Invisible King Crimson(透明キング・クリムゾン)。

ProjeKct Twoはエイドリアン・ブリュー、トレイ・ガン、ロバート・フリップの3人で構成され、1997年11月にエイドリアンのスタジオで始まりました。

キング・クリムゾンと言えば最新テクノロジーが役割を果たしますが、ProjeKct Twoの場合はまさに最新中の最新。

エイドリアンが購入したばかりのローランドのV-ドラムが、ロバートとトレイがやってきた時、まだ段ボールに入ったままでした。

エイドリアンが初めてセッティングを行ない、さっそく演奏が始まりました。

その成果が1998年にリリースされたProjeKct Twoのアルバム『SPACE GROOVE』です。

すべてのProjeKctに言えることですが、ここでも演奏はすべて即興。

ひとつの作品として成り立つのはもちろん、キング・クリムゾン発展のためのR&D(研究開発)としても役立ちます。

この先予定されている『HEAVEN AND EARTH』ボックスセットでは、この時期ProjeKctたちが行なった全パフォーマンスを収める予定です。

『SPACE GROOVE』は唯一、オーディエンスのいないスタジオ作品で、ProjeKct初のレコーディングになります。

ではお届けします。
“Space Groove II” by ProjeKct Two


#07 : 「Ladies of the Road」

2019.02.25 公開


【コメント:日本語訳】
“Ladies of the Road”のリミックス

幸いにも、いや、未発表音源を発掘する立場からしたら、残念ながら、と言うべきか、私とロバートは、やり始めたプロジェクトをきちんと完成させる傾向にあります。

しかし、この“Ladies of the Road”のニュー・ミックスは例外的に未完成です。当初は、1991年の『FRAME BY FRAME』ボックスセットに入れる予定でしたが…

何時間もの作業を経た後、アルバムのオリジナル・ヴァージョン以上の物は作れないとの結論に達しました。

それじたい、恥ずべきことではありません。

つい最近、クリムゾンのとある公演後、チャド・ブレイクというオーディオ・エンジニアを紹介されました。

アルバムの裏側を見ればわかりますが、彼はミキシング・エンジニアとしてグラミー賞を受賞しています。手掛けたアーティストは多数。アークティック・モンキーズ、エルヴィス・コステロ、ピーター・ゲイブリエル、パール・ジャム、トラヴィス、等々。

彼は、ふとこんなことを言いました。
ミキシングに関する講義を頼まれたら、まずは、ポップ・ソングの完璧なミキシングの一例として、“Ladies of the Road”のオリジナル・ヴァージョンを聴いてもらうところから始めると。

ほら、ロバートと私はとうてい無理な作業をしていたのです。

従って、この未完成ミックスはずっとアーカイヴに保管されていました。
が、2006年、ボズ・バレルが若くして亡くなり、我々からのトリビュートとして、また、ファンが想いを残せる場所として、DGM Liveのウェブサイトにアップしました。

悲しいことに、イアン・ウォーレスも間もなくして、2007年2月に亡くなりました。

1991年にロバートと私がリミックスし、2006年にDGM Liveにアップロードされたこの“Ladies on the Road”。
今、ボズとイアンに捧げます。


#06 : 「Larks’ Tongues in Aspic Pt 1 (David And Jamie)」

2019.02.18 公開


【コメント:日本語訳】
デイヴィッド・クロスとジェイミー・ミューアの “Larks’ Tongues in Aspic, Pt. One”

これは『太陽と戦慄』ボックスセット内の「Keep That One Nick」に含まれています。

ちなみに、このようなタイトルが付けられたのは、気に入ったテイクがあると「ニック、今のやつキープ」とメンバーが頻繁に言っていたからで、ニックとはスタジオ・エンジニアのニック・ライアンのこと。ニックが忠実に保管していた数々のアウトテイクからコレクションは作られました。

「Keep That One Nick」のプロジェクトは、2012年のはじめ、数週間の困難な編集/ミキシング作業を経て完成しました。

私が覚えているのは、作業が終わり、堂々とロバート・フリップに試聴してもらった時のことです。私の背後に座り、一時間ほど黙って聞いたあげく放った言葉は

「まあ、2分くらいは良いところもあった」

幸い、こんなことも言ってくれました。

「一方で、君が良いと思うんなら、私としては入れてくれてもかまわんが」

その後、最初のレビューが、「「Keep That One Nick」のためだけにこのボックスセットを買う価値はある」と書いてくれたことで私は救われました。

考えてみれば、ロバートがこのCDを楽しめない、世界で数少ない一人であるのはしかたないことです。なぜなら、ここにあるのはアルバムから外れたアウトテイクばかりで、外部の人間には魅力的でも、外した本人であるロバートにとっては、それを延々と聞かされるなどちっともおもしろくないわけです。

デイヴィッド・クロスとジェイミー・ミューアのパフォーマンスは、実に心が通い合っています。

となると、もし、オートハープを固定していたテープが最後の最後にズレなければ、演奏は未完にならず、ひょっとしたら“Larks’〜”のミドル・セクションは違っていたかもしれない、と思わざるをえません。

そんなデュエット、バイオリン、デイヴィッド・クロスとオートハープ、ジェイミー・ミューアによる“Larks’ Tongues in Aspic, Pt. One”のミドル・パートをお聴きください。


#05 : 「Inner Garden」

2019.02.12 公開


【コメント:日本語訳】
『THRAK』ボックスの『JurassiKc THRAK』に収録されている「Inner Garden」完全版。

キング・クリムゾンのボックス・セット制作は慣例に基づいています。数多くのセッション・テープを聴きあさり、バンドがスタジオで残した、様々な興味深い別ヴァージョンを探すのです。

それらを編集して、あたかも我々が、曲が書かれ、演じられた現場にいたかのようなオーディオ・ドキュメンタリーを作成します。

『THRAK』ボックス・セットもまさにそうでした。「Inner Garden」という曲も、それが書かれ、レコーディングされていく様が段階的に残っていました。バンドがレコーディングしている最中はテープを回しっぱなしにしていたからです。

特にこの時の演奏は、ずっと私の脳裏に焼きついていました。

おもしろいのは、『THRAK』を知っていても、「Inner Garden」は必ずしも目立つ存在ではないこと。「Dinosaur」「Sex Sleep Eat Drink Dream」「Vrooom」「B’Boom」「Thrak」「Walking On Air」など、素晴らしい曲ばかりですから。

そして興味深いのは、アルバムでは、「Inner Garden」は1曲ではなく、2曲に分かれています。当時、私はロバートと共にアルバム制作に携わりましたが、なぜ2曲に分かれたのか、まったく覚えていません。

ただ、わかっているのは、当時のレコーディング・セッションから残されたこの宝物では、ロバートとエイドリアンは1曲として演奏しています。私個人としては、アルバムの2曲バージョンよりこちらの方が思い入れが強いかもしれません。

そう考えると、これは完璧なアウトテイクです。
形は異なりますが、優れた価値があります。

というわけで、1994年「THRAK」のレコーディング・セッションより、「Inner Garden」の初期スタジオ・ヴァージョンをお楽しみください。


#04 : 「Law of maximum distress」

2019.02.04 公開


【コメント:日本語訳】
「ザ・ロウ・オブ・マキシマム・ディストレス(最大苦難の法則)」と「詭弁家」

このエピソードは、アーカイヴの中でも特にお気に入りです。

どこから始めましょうか。

「The Law of Maximum Distress」は1973年11月にチューリッヒで披露された即興ピース。
19年後の1992年に、私とロバートとで、『THE GREAT DECEIVER』ボックスセット用にミックスしました。

その時すぐ明らかになったのは、テープが途中で切れていることです。まず前半の6分半があって、別のテープに最後の2分半が入っていました。

「The Law of Maximum Distress」というタイトルは、すなわち、「悪いことは一番起きて欲しくない時に必ず起きる」という意味でもあります。

10年ほどは、まさにそう思っていました。なぜなら、テープが切れる瞬間こそ、インプロヴィゼーションがクライマックスを迎える時だったからです。

でもその後、コレクターズ・クラブで完全再現するために、1973年のこのコンサートを見直してみることになりました。

アレックス・マンディと二人でブートレグを聞いていると、“失われた”部分が出てきたのですが……

それは、まったく別物、『STARLESS〜』に収録されている「The Mincer」であることが一瞬にして判明しました。

想定外でした。

テープが切れたのではなかった。バンドがアルバム『STARLESS AND THE BIBLE BLACK』を準備する際、ミドル・セクションをまるまる切り抜いてスタジオに持っていき、そこに演奏を重ねて「The Mincer」を完成させたのです。

つまりこれは、マーフィーの法則でも“最大限の苦悩の法則”でも何でもなく、完全なる自傷行為だったのです。

となると、修繕も可能なはず。

でもそれは、残念ながら、切り取られたパートを復元するという簡単なものではなかったのです。なぜなら、「The Mincer」のマルチテープは、我々がアーカイブに所有しない、数少ない一本だったからです。

そのため、代案を考えました。

コレクターズ・クラブ41では、ブートレグ音源を欠損部分に当てて使用しました。これで、コンサートで演奏されたとおりの即興を再現することができます。ただブートレグ部分の音質が劣るため、満足とは言えない出来でした。

『STARLESS〜』ボックスセットでは、違うアプローチを試しました。

1993年にロバートと二人でミックスした「The Law of Maximum Distress」パート1と、『STARLESS〜』に収録されている「The Mincer」をデジタル編集し、そのあとに「The Law of Maximum Distress」パート2を付け加えました。

簡単な編集ではなく、デジタルな“ごまかし”を施すことでうまく行きました。でもこれで、オリジナル・ヴァージョンの精神が、より良い形でよみがえったのです。

聞いてください。
「The Law of Maximum Distress」meets「The Mincer」

いえ、今ならこちらのタイトルの方が適当かもしれません。

「The Law of Self-inflicted Distress」(自らが招いた苦悩の法則)


#03 : 「Cadence and Cascad」

2019.01.28 公開


【コメント:日本語訳】
ケイデンスとカスケード 4シンガー・ヴァージョン
「Cadence and Cascade」

50周年記念のまだ3曲目ですが、暗黙のルールをすでに破ってしまいました。

事をシンプルに運ぶために、ここでは既存曲のみを披露し、新たなエディットやレコーディングは作らないつもりでした。

しかし「Cadence〜」の場合、果たしてどのヴァージョンを使うべきか、という難問が生じました。

キング・クリムゾンならではのことですが、同じバッキング・トラックに、4人のシンガーが歌をのせています。

過渡期を反映しているとも言えます。1969年にグレッグ・レイク、マイケル・ジャイルズ、イアン・マクドナルドが脱退したことで、1970年の『ポセイドンのめざめ』は、ロバート・フリップとピーター・シンフィールド二人によって作られました。
グレッグとマイケルはセッション・ミュージシャンとしてアルバムに参加していますが。

最初に聞こえてくるのはゴードン・ハスケルで、これがアルバムに収録されている“公式”ヴァージョン。

次がグレッグ・レイク。彼は『ポセイドン〜』の他の全曲を歌ってますが、「Cadence and Cascade」は歌っていないと思われていました。しかし、例によってアーカイヴはそれを否定し、彼とのセッションを残していました。間違いなく、バッキング・トラックに合わせて歌うグレッグの声です。しかし、最終的な歌入れというより、ガイド・ヴォーカルであった可能性は高いでしょう。

21年後の1991年、ロバートは『FRAME BY FRAME』ボックス・セット用に「Cadence〜」を歌わないかと、エイドリアン・ブリューに声をかけました。

そして最後に、忘れてはならない、現在のバンドで「Cadence〜」を歌うジャッコ・ジャクスジックです。

今回4人のシンガーを合体させて出来上がったのがこのニュー・エディットとなります。


#02 : 「The Terrifying – Tale of Thela Hun Ginjeet – [Live, Mixed, Philadelphia, Pa, July 30, 1982]」

2019.01.20 公開


【コメント:日本語訳】
テラ・ハン・ジンジートにまつわる恐ろしい話 – 語り:ロバート・フリップ〜語り:エイドリアン・ブリュー〜ライヴ:1982-07-30 マン・ミュージック・センター、フィラデルフィア、PA

「The Terrifying Tale of Thela Hun Ginjeet」は、ほぼ読んで字のごとく。

ロバート・フリップと働き始めた頃、彼が、この曲の中の、エイドリアン・ブリューのストリート・トークの由来を話してくれました。言うまでもなく、これは1981年にリリースされた『DISCIPLINE』の収録曲ですね。

その後、アーカイブを調査している際、ロバートが1981年に、まさにこの曲を解説している音声を発見しました。
おそらく、ニューヨークのワーナーブラザースを訪れ、アルバムを売るようハッパをかけた時、営業部長にでも話していたのでしょう。

それを今回使ってみました。

そして、もう一本カセットが出てきました。エイドリアンが、道端で絡まれた時のエピソードを話しています。それをスタジオ・ヴァージョンの原曲にナレーションとして加えました。

これはライヴでも使われていたので、3つの素材を合体させています。

最初にロバートが、なぜエイドリアンが町中に送り出されたのかを説明します。次にエイドリアンが、その町中で何が起きたかを語ります。そのまま曲へと流れ、ここでは、1982年のフィラデルフィア公演が使われています。

こうして3つ合わせて出来上がったのが「The Terrifying Tale of Thela Hun Ginjeet」です。もともと、2008年の短いキング・クリムゾン・ツアーの、ツアーボックス/オーディオ・ツアー・プログラム用に作られました。

それではお楽しみください。


#01 : 「21st Century Schizoid Man 1991 Radio Edit」

2019.01.13 公開


【コメント:日本語訳】
ようこそ! 私は「King Crimson 50」のプロデューサー、デイヴィッド・シングルトンです。

キング・クリムゾンの50周年を祝うため、1月13日より毎週1曲、レア曲や興味深い曲を計50曲リリースしていくことになりました。
1月13日はキング・クリムゾンの誕生日ですね。1969年のこの日、ロンドンのフラム・パレス・カフェで彼らはリハーサルを始めました。

記念すべき1曲目は、「21st Century Schizoid Man」。デビュー・アルバムのオープニング・ナンバーですからとても相応しいと思います。

このヴァージョンは、私自身が初めてバンドと関わったものでもあります。ロバート・フリップとの初仕事は、1991年の、『FRAME BY FRAME』ボックス・セットの制作でした。

このラジオ・エディットが生まれた時のことは今でも鮮明に覚えています。
当時のヴァージン・レーベルは、この曲のラジオ用ヴァージョンを希望していました。ボックス・セットを宣伝するためです。でも、ロバートはこう言い放ちました。「7分30秒以下なんてありえない」と。
すると、あの頃はまだキング・クリムゾン初心者だった私は、ついこんなことを口走ってしまいました。「そうですか? 最初に聞いた時、最初のヴァースも、次のヴァースも、その次のヴァースも最高だけど、途中のソロは何のためにあるのか理解できませんでした。だからショート・ヴァージョンも可能なのでは?」と。

ユーモアのセンス抜群なロバートは、それを聞いて、だったらその通りのエディットを作ってみなさいと言いました。

果たして今、満足できるヴァージョンかはわかりませんが、ここにお届けします。
1991年の、「21st Century Schizoid Man」ラジオ・エディット。