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トレイ・ガン(元キング・クリムゾンメンバー)インタビュー

Interview:深民 淳

トレイ・ガンと日本で接したのは2004年の4人編成に戻ってからのKCのツアーの時だった。今から13年も前の話だ。その時はトレイもまだ30歳代だったし、ドラムのパット・マステロットも同様に若かったので、大阪公演の後、街に繰り出し盛り上がった覚えがある。

テキサス生まれのトレイはストレートなアメリカン体質と繊細な感性を持った人物で、一緒にいて楽しかったアーティストのひとりだが、あのステージにおけるファッションセンスはなかなか凄いものがあった。2004年ツアーの時我々が彼につけたあだ名は『体操着野郎』。どう見ても昔の中学生が着ていた、上下白のトレパン、トレシャツにしか見えない格好でステージに上がっちゃうのである。プレイは凄いんだけど、脱力系と当時は言われていた。あれから10年以上、そのセンスも少しは向上したかと思いきや、4月に来日するトレイとクリムゾンに入り損なったドラマー、名手ジェリー・マロッタが組んでピーター・ガブリエルの初期楽曲を独自の感性で再表現するプロジェクト・バンド、セキュリティ・プロジェクトのライヴ写真を見て唖然とした。完全に逆・ファッション番長の王道を邁進していたのだ。ステージでスカートだぞ! お~い、君はバグパイプ奏者なのか?という感じ。

というわけで、プレイは世界屈指の演奏力の反面、かなりユニークなファッションが見られるのではないかと、今から楽しみにしている。酷いヤツだと思われそうだが、はっきり言います。楽しみにしています。トレイ・ガン、4月の来日でどんな姿でステージに登場するかを!

さて、というわけで、セキュリティ・プロジェクトで来日直前の元キング・クリムゾン・メンバー、トレイ・ガンのインタビューをお届けします。セキュリティ・プロジェクトというバンド名とトレイ・ガン、ジェリー・マロッタという最強リズム・セクション・チームのイメージがうまくリンクしていないため、現状、知名度イマイチですが、これは観ておいた良いですよ! 先にも書いたように演奏はもちろん、それ以外も含めて。

──いよいよSecurity Projectの来日間近ですね。あなたにとって何年ぶりの来日?

トレイ・ガン(以下TG):前回は、僕とパット・マステロットと、フィンランド人アコーディオン奏者キンモ・ポーヨーネンのプロジェクト、KTUだったはず。いや、待てよ。エディ・ジョブソン、マルコ・ミンネマン、アレックス・マカチェックとUKZで来た時? ごめん、思い出せない。パスポート見て確かめなきゃ! いずれにせよ、約8年ぶりになるね。

──ハッピー・ローズへのヴォーカリストの交替には驚きました。まず、彼女とはどのように知り合ったんですか?

TG:ハッピーとは20年来の知り合いで、僕もジェリー・マロッタも一緒にレコーディングしたことがある。彼女の才能には、常々、深い敬意を持っていたから、僕もジェリーもいつか共演したいと思っていたんだ。やっと念願叶った!

──なぜ彼女だった?

TG:前のシンガー、ブライアン・カミンズがプロジェクトから抜けた時、僕らはきびしい選択を迫られた。果たして、もう一度ピーター・ガブリエルっぽい人、似た声の持主を探すべきか? それとも、いったんピーターから離れて、似ても似つかない人を探すべきか? 実はこの時、僕もジェリーも同じことを思っていた。ハッピー・ローズに話してみよう! クレイジーなアイディアだとは思った。この素材を女性が歌うなんて。でも、ハッピーの声は“普通”の女性のとは違う。深みのある低音から、美しくピュアな高音まで出せる。そして何より、彼女自身すでに確立したアーティストなんだ。だから、リスクを負うつもりがあるなら、ハッピーこそベストな人選だと思ったんだ。(力のあるアーティストなら、リスクこそが唯一の純粋な道だと知っているはず)

──SCのような、特定なアーティストを取り上げるバンドに女性ヴォーカルが入ることじたい驚きですが、あなたもハッピーもそれについてはどう思っていましたか?

TG:ハッピーは最初断ってきたんだ。無理もないよね。ブライアンの声のファンもけっこうな数ついていたし、彼らは、ブライアンの声がピーターの声と似ているのが好きだったわけだからね。なかなか説得は大変だった(笑)。でも、一度みんなで集まって作業を始めると、これがとてもユニークなプロジェクトであることがわかったし、多くのアレンジを手直しするいいチャンスにもなった。

──セットリストは以前とどう変わりましたか?

TG:核となる曲の多くは同じで、ほとんどは3枚目の『Melting Face / ピーター・ガブリエル III』と4枚目の『Security / ピーター・ガブリエル IV』から選曲されている。そこに、ハッピーの声によく合うケイト・ブッシュの曲を足し、あと、ハッピーのオリジナル曲も。彼女、11枚もソロ作を出しているんだよ。

変わったのはセットリストよりアレンジの方だね。まだまだ変化の途中だよ。日本公演では、さらに新しい“ひねり”を加えようと計画中! それぞれのメンバーから様々アイデアが提示されるんだ。どんどん変わっていくよ。

──ハッピー加入後のオーディエンスの反応は?

TG:みんなすごく気に入ってくれている。誰も、シンガーが新しくなったね、と話しすらしない。なんか、不思議なことに、よりいっそうグループっぽくなったみたい。もしかすると、ジェリーとマイケルと僕が、前以上に歌っているからかもしれない。でも、あくまで個人的な意見だけど、ハッピーがピーター・ガブリエルに似ていないことが、むしろ、音楽を開放し、ますますパワフルにシフトするきっかけになったような気がする。

──今後ピーター・ガブリエルから離れて枝分かれしていく可能性は?

TG:すでに枝分かれし始めているよ。実際に彼女が参加してからのツアーではケイト・ブッシュとハッピーの曲を加えたからね。両者はこの先ももっと探求していきたい分野だし、個人的にデイヴィッド・シルヴィアンもいいなと思っている。シルヴィアン/フリップにも惹かれる。プラス、オリジナル曲を書く意欲も高まってきている。

──最新のライヴ音源ではハーモニー・ヴォーカルが聞こえてきますが、歌っているのは?

TG:ジェリーと、マイケル・コッツィと僕の3人。以前はブライアン任せだったけど、ハッピー加入後は男性の声が必要な場面もあるから、歌パートがどんどん増えてきているんだ。

──日本用に特別なセットリストを組む予定は?

TG:数週間後にリハーサルが始まるから、さて、どうなるかな?? 僕も含めみんな色々なことを考えていると思う。楽しみにしておいて欲しいな。

──ジェリー・マロッタとはシルヴィアン/フリップ時代に一緒にやっていましたが、その後SCに至るまでに共演はありましたか?

TG:僕とジェリーはもっともっと一緒に仕事すべきだ。彼との演奏を体験するといつもそう思う。(実際、Thrak期のクリムゾンには最初、ジェリー・マロッタが参加する可能性が高かった。結局実現はせず、トレイのみクリムゾンに参加する。ジェリーはその後もセッション・ドラマーとして多忙な生活を送ってきたのでなかなか共演の機会がなかったのだ)ちょっとした共演はあったけど、このSecurity Projectでようやくガッツリ組むことができたよ。

──リズム・セクションの相方として、ジェリーのドラムに惹かれる点は?

TG:ずばり、イマジネーションの豊かさ。あの感性は本当に素晴らしい。そして何より、ドラムキットという物を完全に“再・想像”(英語ではクリムゾンが2016年のアルバム『Radical Action』で引用した”Re-Imagine”という言葉をそのまま使っている)できる才能。ドラマーとしての選択肢の豊かさ。とにかく、めちゃくちゃスペシャルな人間さ!

──他のメンバーも紹介してくれますか?

TG:デイヴィッド・ジェームソン。キーボードの魔術師。アイゲンハープ奏者。アイゲンハープとは、実にクレイジーな電子バスーン楽器だ。デイヴィッドは元IBMのプログラマーで、今我々がデジタル・オーディオと呼んでいる物の開発に携わった。彼のおかげで、ガブリエルの音楽のユニークな雰囲気とキーボード・サウンドに命が吹き込まれた。大変な作業だったと思うよ。

マイケル・コッツィ。ギター、バック・ヴォーカル、プロデューサー、ミキサー。過去にはShriekbackとSky Cries Maryでプレイしていた。敏腕プロデューサーでもあり、我々のレコーディングのミックスもすべて手掛けている。

──SCの来日は知っていても、まだ決めかねている人々に、やっている側からSCのライヴの面白さ、見所をアピールしてください!

TG:もともとユニークなピーター・ガブリエルの楽曲を、誰もやったことがない形で再現します。ガブリエル自身、これらの楽曲はもうライヴではやっていません。Security Projectはオリジナル曲と同じクオリティで演奏を行いますが、そこに、我々独自のミュージシャンシップを持ち込むことで、これらの楽曲を再認識し、新たな活気と力強さを与えます。最初はトリビュート的なものだったのが、ツアーを重ねるごとにどんどんユニークなものになっていき、これまでになかった体験をみなさんに見てもらえると思います。是非、会場で会いましょう!

──少しキング・クリムゾンの話しをしますが、SCが取り上げているガブリエルの曲のベースはもともとトニー・レヴィンが弾いています。今それをあなたが弾いてみて、トニーのプレイについて気づいたことはありますか?

TG:とにかく素晴らしいよ。時々ベース・プレイヤーたちにアドバイスを求められるんだけど、そういう時は「トニーの演奏を聴け」と言う。特に、彼がどこで、いかに音をリリースするか注目しろと。多くのベーシストは、音の出だしを気にする。でもトニーはそれより、どこで終わるかに注意を払う。彼のグルーヴからそれが伝わってくる。

ガブリエルの楽曲の中にはトニーの素晴らしいプレイがちりばめられている。しかも、スティック・プレイのエッセンスまで。僕は、スティックは使わず、Warrギターかスレットレスを使っているけど、トニーはガブリエル時代に、いわゆるタッピング・ベースというスタイルを発見し、確立させた。“I Don’t Remember”あたりが良い例だ。

──Thrak時代は、低音担当があなたとトニーでした。二人の関係はどんな感じでしたか?

TG:とても良い関係だったよ。低音域が二人いることで、交渉が必要な場合も多々あった。彼が一番低い時もあれば、僕がそうであることも。でも、我々の関係がどれだけクールになれるかにようやく気づいたのは、最後の6ピース・ツアーの時だと思う。例えば“Elephant Talk”で、彼が8小節やったあとで僕が8小節やるとか。“Neurotica”では、トニーがバック・ヴォーカルにスイッチして僕がベースを担当するとか。基本、二人いっぺんに低音域にいられないけど、僕らは上手に役割分担していた。

──クリムゾンはついに8人編成になりました。あなたがいた時も6人でしたが、大人数って大変でしょ?

TG:というか、次のクリムゾンは、ギタリストもシンガーもやめて、ドラマー8人でいいんじゃない?(笑)

──今だから話せる、クリムゾン時代のおもしろエピソードありませんか?

TG:はは、そうだなあ……笑えるエピソードの多くはThe ProjeKCts時代の話しかな。あの頃は、95%インプロヴィゼーションだったけど、それでも一応セットリストはあったんだ。(ProjeKCt Twoが日本で演奏した時のセットリストがあったのでお見せしますね!)セットリストと言っても、実際は“即興の雰囲気作り”のためというか、そのセクションのトーンを事前に決めるもの、と言えばいいかもしれない。だけど我々はどうしても、どうしても、どうしても、セットリスト通りに演奏できなかった。自分たちで作ったリストなのに。なぜなら、音楽に別の場所まで導かれてしまうから。でも、中にはそれを修正しようとする人(修正しようというのですからこれはフリップ先生のことでしょう)がいて、そういう時は妙に可笑しくて、うちわウケのように笑いだしてしまう。どうせ誰にも軌道修正なんかできないんだから、音楽に身を任せるしかなかったんだ。

──最後に、あなたにとってロバート・フリップはどんな存在ですか?

TG:僕の中のクリエティヴなエンジンを、常に動かしてくれるガソリンのような存在だよ、いつもね。

一度だけのツアーで終わるのかと思われた、セキュリティ・プロジェクトだが、ヴォーカルのブライアンが元々在籍していたジェネシスのトリビュート・バンドに戻り、今度こそ危ないと思ったら、なんと女性ヴォーカルを加えて活動続行となったには正直驚いたが、来日前、昨年末に行ったUSツアー時に撮影されたプロモ映像を見る限り、素材はピーター・ガブリエル、でもそっくり再現レベルからステップアップして新たな次元に向かいそうな雰囲気大。メンバー交代後、手探り状態から始まったツアーがメンバーたちの想像以上の手応えを持って迎えられたことで新たな展開が見えた、そんな感じだ。トレイにとっては8年ぶりとなる4月のセキュリティ・プロジェクトでの来日。

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